STORY
Written by 佐藤美月

デザインの魅力を改めて感じた瞬間と人生を変えたきっかけ。

 

約10年前、私には訪れてみたいと思っていたカフェがありました。今となっては何故そこまで興味を持ったのか分からないけれど、SNSでたまたま見つけて以来、ずっと気になっていたその場所。ついに訪れることができたのは、それから数年後の2017年11月のことでした。


ナビに頼って辿り着いたその場所は、なんとも怪しげで古いビル。入りづらさに少し後悔しつつも、暗く細い廊下を抜け、エレベーターに乗り込み扉が開くと、眼の前に広がったのは開放感のある異空間。外観からはとても想像のできない空間への衝撃と、その時のワクワクした気持ちは今でも鮮明に覚えています。

 

 

 

 

 

同フロアにはカフェのほか、WONDERINGを運営するデザイン事務所"COMMUNE"とイベントスペースが併設されており、ガラスの仕切り越しに見えるオフィスには、格好良く働くデザイナーの姿が。


オフィスの前には、COMMUNEが手掛けたパッケージ・グラフィック・プロダクトデザインなどの仕事が展示されていて、どれも心躍るものばかり。街で見かけたことがあるデザインもあり、"この人たちが作っていたんだ!"と、食い入るように眺めていました。


というのも、デザイナーという職業は私にとって憧れの一つ。子どもの頃から絵を描いたり、コラージュをしたり…何かを作ることが大好きで、街で貰えるお洒落なフライヤーを集めていたりもしていました。その夢を諦めた理由はただ一つ。小学生の頃、参観日で私の描いた絵を見た母が衝撃を受けるほど、壊滅的に絵が下手くそだったから。


芸術的センスがないことは早々に自覚していたのです。


 

だからこそ、"もしも自分が絵が上手くて才能ある人生を歩めていたら、この素敵な場所でこんな格好いい仕事をしたかったなぁ"と気づけば心のなかで呟いていました。
(いや、しっかりSNSで世の中に発信していました。)  

 

 

 

 

 

このときもらった、COMMUNEの作品集はそれから私の宝物の一つ。
実はいまでもずっと大切に保管しています。  

 

 

長くなってしまいましたが、これが私のデザイナー、そしてCOMMUNEを始め、WONDERINGスタッフとしての原点。  当時はまさか自分が、憧れのこの場所で働くことになるとは夢にも思っていませんでしたし、とっくに諦めていた夢だったのだから驚きです。これが本当のターニングポイントってやつなのでしょう。  

 

 

ここまで聞くと、ただの夢物語のように聞こえるかもしれませんが、異業種からの新たな挑戦は決して簡単なものではありません。覚悟はしていたけれど、これまでの仕事のやり方は全く通用せず、毎日が手探り状態の中での真剣勝負。

 

 

それでも、もちろん楽しいことや嬉しい事も沢山あるし、何より視野はぐんと広くなった。いままでの人生ではできないような経験もあり、充実していることは間違いありません。けれどやっぱり、表面上に見えるキラキラだけではなかなか通用せず、思うように上手く出来ない自分に落ち込むことも少なくありませんでした。

 


そこで私は自分の中でいくつかの小さな目標を作ることに。ここに書くまでもないような些細なものばかりですが、その中の一つが私の原点でもある、あの日見た"COMMUNEの作品展示に、自分が手掛けた作品を並べること"です。

 

 

そしてCOMMUNEにJOINして5年が経った今、WONDERING併設のイベントスペースVOIDにて、その目標が叶いました。あの時私がCOMMUNEのデザインに心を踊らせたように、自分が手掛けた作品も誰かの心に響くものになりますように…。そして、デザインに興味を持ってくれる人がもっと増えますように。そんな想いを抱きながら、日々の仕事と向き合っています。


 

特別なイベントがない期間は、COMMUNEの作品を展示しているので、お店に訪れた際には是非覗いてくれたら嬉しいです。

 

 

 

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