Tsubasa Fujikura Exhibition "NEON-SIGN 9.2" at VOID
4月26日より開催していた写真家・藤倉翼さんによる展示「NEON-SIGN 9.2」が、先日無事に会期を終えました。約3週間にわたり、足を運んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
藤倉さんとは、COMMUNEのクライアントワークをはじめ、今回のお店の立ち上げに際しても施工や商品撮影など、さまざまなシーンでご一緒してきました。今や私たちと同じくらいお店のことを知っているのでは、と思うほど。そんな長年のご縁への感謝と、ぜひ多くの方に作品をご紹介したいという想いから、お店に併設しているイベントスペース“VOID”の第一弾として展示をお願いしたのが今回のきっかけでした。
2008年からネオンサインをテーマにしたシリーズ「NEON-SIGN」を撮り続けている翼さん。近年では、耐久性の問題や職人の高齢化により、姿を消しつつあるネオンサイン。そんな街の記憶を、正面から丁寧にとらえた作品群は、単なる記録を超え、都市の時間を切り取った静謐なアートとなっています。
大胆なトリミングによる幾何学的な構図のみを抽出した抽象表現、ライトボックスや約2メートルの立体作品としての展開など、シリーズは進化を重ね、札幌芸術の森美術館、KG+などでも発表されてきました。今回の展示は、その最新版「Version 9.2」として、新作を含む構成で披露されました。
展示会場となったVOIDは、むき出しの鉄骨と無骨な質感が残る空間で、通常のギャラリーのような壁掛け展示が難しいという制約があります。けれどその分、頑丈な躯体を生かした展示にしようと、天井から巨大な作品を吊り下げ、ネオンサイン本来の“街にある存在感”をそのままに再現するような展示となりました。インダストリアルな空間に放たれたネオンの存在が、不思議としっくりと馴染み、来場者の視線を惹きつけていました。
また一部の作品は、お店のプロダクト展示と混じり合うように、展示空間からはみ出すように設置。そこには「視線」や「関係性」をテーマにした作品《Line of relation》も。アートとプロダクトの間に境界線を引かず、空間全体で体験してもらうような構成にしました。
ゴールデンウィーク中には、2027年の札幌国際芸術祭のフェスティバルディレクターを務める細川麻沙美さんをお迎えし、翼さんとのトークショーも開催。実際の展示作品を前に、それぞれにまつわるエピソードや撮影背景についてお話いただきました。翼さんの作品集へ寄稿もされている細川さんからは、アート界の視点で鋭い考察も飛び出しました。
会期中は、翼さんの作品を目指して来てくださった方はもちろん、偶然立ち寄ったお客様まで、さまざまな方が展示を楽しんでくださいました。ネオンサインというテーマは、世代やバックグラウンドを超えてどこか懐かしく、親しみのあるもので、「これ見たことある!」という声もちらほら。北海道で撮影された作品も多く、次は実際に見に行きたいと話してくださる方もいて、アートを日常に引き寄せるきっかけとなったように思います。
普段お店に立ちながら感じていた、「商品」や「作品」を通して、その背景にいる作家やブランドとの“つながり”をもっと実感してほしいという想い。今回の展示では、作家本人がその場にいて、ご自身の言葉で語ってくださることで、その距離が一気に縮まる感覚がありました。言葉では伝えきれない感性や思想が、空間を通して自然に浸透していくような、そんな展示体験をつくれたことを、私たち自身、強く実感しています。
これからもWONDERINGでは、モノや人、感性が交差し、つながっていくような展示やイベントを、少しずつ重ねていけたらと思っています。
写真提供(展示写真部分):藤倉 翼
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